SC相模原に立ちはだかる新スタジアム問題 日本のスタジアム基準やJリーグのライセンスから相模原が解決するべき課題とは〜前編〜

こんにちは。ハムイチです。

今回は話題となっているSC相模原の新スタジアム問題について書いていきます。長くなってしまったので前編、後編に分けています。

SC相模原は2021年2月に相模総合補給廠(さがみそうごうほきゅうしょう)一部返還を活用した多機能複合型スタジアム整備を要望する署名提出を相模原市に提出しました。

この署名運動はSC相模原、三菱重工相模原ダイナボアーズ、ノジマ相模原ライズ、ノジマステラ神奈川相模原の相模原を拠点として活動しているプロスポーツチームが共同で行った運動で約1年間の署名運動で104,201筆を集めました。

https://www.scsagamihara.com/news/post/20210212001

SC相模原ホームページより引用

この署名が10万票を上回ったことで相模総合補給廠の一部に新スタジアム構想が話題となりました。SC相模原ファン、サポーターであれば喜ばしい事です。

しかし、相模原市民全体として建設を望む声が多いかと言われると疑問です。

そこで、今回は日本でサッカースタジアムを建設するに当たり必要な基準やJリーグが定めているライセンスから現在の相模原が抱えている問題点についてまとめていきます。

JFAの求めるサッカースタジアム

スタジアムに求められる観戦環境

①スタジアムの屋根

天候に左右されずに試合を行うためにはスタジアムの屋根が全ての席をカバーする事が求められています。ただ、そうなると陽が当たらず天然芝の管理が難しくなります。理想は豊田スタジアムのような開閉式のドーム、札幌ドームのような可動式天然芝サッカー場(世界初のホヴァリングシステム)です。しかし、これらのスタジアム建設には莫大な費用がかかります。

②トラックの取り扱い

トラックは陸上競技を行うために必要ですが、サッカーにおいてはピッチと観客席との距離が遠くなり、またスタンドの傾斜が浅くなるためサッカー観戦には適しません。自治体により陸上トラックを設置しなければいけない場合もありますが、静岡のエコパスタジアムは可動式のスタンドを備えています。ただ、これにも費用がかかります。

  • 札幌ドーム 537億円
  • 豊田スタジアム 451億円
  • エコパスタジアム 292億円

適合性

①周辺環境への適合性

スタジアムと近隣住民との距離は難しい問題であり近隣住民に納得してもらえるように分析や計画する必要があります。

例えば、

  • 試合開催時の観客の導線確保
  • 騒音、光害を防ぐ障壁の設置
  • 試合開催日以外のイベント開催

②地域社会との関係

地域の代表者、地元サッカー協会などとコミュニケーションをとり、地域に根差したスタジアムにする必要があります。スタジアムが地域社会の人々が集える場所で共有する財産となり地域住民に利益がないといけません。

例えば、

  • スポーツイベントと娯楽イベントが手軽に楽しめる
  • スタジアムの建設と運営による雇用が生まれる
  • スタジアムの観客により地域のホテル、店舗、レストランなどの利用者が増えて地域活性化に繋がる
  • 地域住民が使用できるジム、会議室、託児所、福祉施設などが設置される
  • 地域の知名度が上がる

安全性

①震災・火災

日本は災害大国であり、多くのスタジアムが公園内にあり災害時の広域避難場所、防災拠点と位置付けられます。観戦中の災害や災害に対する情報共有システム、安全な避難誘導をする必要があります。

②緊急医療

緊急医療体制として医師、救急救命士などの医療スタッフ、医療設備を調える必要があります。救援のための緊急車両、担架、ストレッチャーなどの導線を確保した計画が必要です。

③観客の暴徒化

日本では考えにくいですが、興奮した観客がピッチに入る、観客席で騒ぎ施設を破損する、他人に危害を与えるなどが想定されます。これらの対策には地元の警察、消防等と協議して具体的な対策が求められます。

予算と施設水準

予算の確保が新スタジアム建設の鍵となります。スタジアムの規模と快適性は予算次第です。

予算に限りがある場合でも基本的なスタジアムの建設は可能です。その場合は全体的な構造が将来的な改修に耐え、ニーズの増加に合わせて、費用効率に優れた方法で改善できるか、という点が重要になります。

例えば...

  • ピッチが見やすくサービス施設にアクセスしやすい場所に客席やスカイボックス(客席上部にあるテーブル席やラウンジ等)を将来的に設置できるか
  • 将来的に大型映像装置を設置する場合に客席を削ることなく設置できるか
  • 屋根を設置しない場合は外壁と隣接エリアが屋根の増設に耐えることが出来るか

事業主体と運営主体

日本のサッカースタジアムの多くは都市公園施設として公的な機関が事業主体となっているケースが多いです。

そのため建設の主体は地元の自治体となり、国の補助基準等により施設の整備水準や予算枠まで制限されます。

近年はサッカー協会やスタジアムを使用するJリーグチームが自治体と協議してスタジアム建設計画を行っていることが多いですがこの協議が不十分だと不具合が生じることもあり、今後も建設と管理・運営の一元化、その連携強化は重要になります。

収容人数

スタジアムを使用するクラブのニーズに対応するだけで十分か、国際試合などより高いレベルの試合を誘致するかなどにより収容人数が変わります。

スタジアムの最適な収容人数を決定する方式はありませんが、カテゴリーにより収容人数を分類しています。

FIFAクラブワールドカップ

日本代表

40,000  人以上

J1

15,000  人以上

J2

10,000  人以上

J3

5,000 人以上

立地条件

スタジアムは広い面積を必要とするため郊外となるケースが一般的です。郊外であれば公共交通機関の駅から離れた場所となり、駐車場面積も大きくなります。こうした場合は主要基幹道路や高速道路への便利なアクセスが必須となります。

最も理想とされるのが都市の中心部で公共交通機関や主要道路、高速道路からのアクセスの良い、試合日以外にも使用できる駐車場がある十分な広さをもった場所です。

相模総合補給廠(建設予定地)

2.観客関連

待機スペース

スタジアム入場を待つ間に観客が待つスペースが必要です。人気のある試合では待機列を組むスペースも必要となります。また、チケット購入時の窓口周辺や手元を照らす照明、入場前の観客に情報を伝える放送システムが必要です。

コンコース

ハーフタイム時に多くの人が往来するため広いスペースが必要です。また、冬の寒い時期でも快適に過ごすことが出来る空調設備、飲食店、グッズ販売が求められます。

観客席の快適性

客席1つ1つが独立し、背もたれが30cm以上、可能であれば肘掛けもあることが望まれます。

席の間隔は膝が前列の席の後部やその席に座っている人にあたらない、満員でも楽に出入りすることが出来るスペースが必要です。

以上がJFAの理想とするスタジアム要件の一部です。まだまだ細かい要件は多岐に渡ります。全てを満たす必要はありませんがこの要件に相当しなければJ1ライセンスの要件をクリアするスタジアム建設は難しいと思います。

SC相模原にとってはまずはJ2ライセンスの要件クリアが直近の課題ですが上記で記載したように予算確保が難しい場合は

「限りある予算で建設し、将来を見据えた改修が出来るか」

これが重要になります。

これらの条件が新スタジアム候補地に該当するのか

新スタジアム候補地(相模総合補給廠)で考えてみます。

該当している条件と思われる

  • JR相模原駅から徒歩数分でアクセスしやすい
  • 運営、管理は自治体ではなくクラブとDeNAが共同して行う。

難しいと思われる条件

  • 予算の確保
  • 地域住民の理解

まずは、予算が組めるかですかね。返還地は相模原市が主体となりレクリエーションパークを運営するしているためスタジアム整備も同じようになると思います。ただ、当然自治体だけで予算を組むのは困難のため、国の補助金、企業、サポーターからのクラウドファンディングなどで予算を組めるようにする必要があります。

また、相模原市は3区に分かれていますがそれぞれ区の特徴があります。

南区は相模大野駅を中心とした若い層。人口は3区最多の約28万人。町田や横浜にもアクセスしやすい。相模原市にこだわらない人も多いかもしれません。

スタジアム建設予定の中央区は相模原駅、淵野辺駅周辺に住宅やマンションが多数並んでいます。横浜線沿線の住民にとっては新スタジアムは身近な存在になるでしょう。相模原駅近周辺の住民の理解を得ることはとても重要です。

緑区は橋下駅周辺の商業施設もありますが津久井、相模湖など緑豊かな場所です。面積は3区最大ながら人口は最小。中央区もそうですが車社会であり、でかける先には駐車場が必須といえます。

相模原市に限らずホームタウンの地域の皆様のサッカーやスポーツへの関心がどの程度あるのかを調査する必要があります。はっきりいえることは署名運動に賛同した10万人以上は興味と関心があるということ。その他の多くの地域の皆様の賛成や納得を得られるか。多額の税金を投入してサッカースタジアム建設に納得していただけるか。

大阪の吹田スタジアムは収容人数40,000人にも関わらず、建設費は150億円。この規模ではかなりのコストパフォーマンスです。しかも、そのほとんどが寄付金です。

広島の新スタジアムも構想から10年近くかかりましたが2022年2月に着工しました。このスタジアムも広島県、広島市、商工会議所など協力はもちろん、寄付金やふるさと納税を利用して資金を集めています。3万人収容のスタジアムで現段階では総事業費290億円(県と市が50億円ずつ負担)となっています。今後も協議されていくようです。

予算の確保は最も難しい課題ですが、建設したいクラブが自治体や企業、地域の住民の皆様をどこまで本気にさせるか。どこまで本気で取り組むかによって確保できる予算が決まると思います。

まだまだ課題はたくさんありますが、新スタジアム建設もしくはギオンスタジアムの改修によりJ1、J2ライセンス取得の後押しをしていきたいと思います。

長くなりましたので前編はここまでとします。

後編はクラブライセンス制度と現在使用している相模原ギオンスタジアムについてまとめていきたいと思います。

参考資料

クリックして01.pdfにアクセス

日本サッカー協会ホームページ スタジアム標準 サッカースタジアムの建設・改修にあたってのガイドライン

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